江戸商家と寺社-三囲神社と三越

江戸商家と寺社-三囲神社と三越

江戸商家と寺社-三囲神社と三越

三囲神社境内のライオン

墨田区向島に三囲神社があります。創建については不明ですが、弘法大師の創建と伝えられ、文和年間(1352-56)に、源慶上人が再興をはかります。
社殿再興の際に神像が出土し、そのときに現れた白狐が神像の周りを三度回ったことから三囲神社と名付けられたとされます。
境内はなかなか広く、たくさんの見所があります。
下の写真は墨堤に並ぶ大鳥居。桜の名所の墨堤にありランドマークとして人々に人気だったようです。

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そんな中で目を引くのは、狛犬の隣に座るライオンです。

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このライオン、日本橋に本店を構える老舗の百貨店、三越に設置されているライオンと同じものです。三囲神社のライオンは池袋三越が閉店した際にこちらに移されたものです。三越と三囲神社の関係は、三越の原点と言える、江戸時代の大店、三井越後屋にさかのぼります。

江戸の大店、三井越後屋

家康が征夷大将軍に任命され、江戸に幕府を開くと、消費需要を目当てに多くの商人が江戸に進出してきます。商業の発展していた、伊勢、近江などの大店が江戸支店を続々と開きます。そのため、江戸の大店の屋号には伊勢屋、近江屋が多かったと言います。東急百貨店の前身である日本橋白木屋や、ふとんの西川として今も残る西川屋は近江出身です。
そして三越の前身である三井越後屋は伊勢の出身です。
三井越後屋は、伊勢松坂出身の三井八郎右衛門高利が延宝元年(1673年)に日本橋本町でスタートさせました。高利の商才により、三井越後屋は大繁盛。あまりの繁盛に、周囲の呉服屋仲間より反感を買い、天和3年(1683年)、駿河町に店を移します。(河合敦監修 図解江戸の暮らし辞典より)
駿河町にあった店舗は、間口が35間(64メートル)もある大きなものであったことからも、三井越後屋の繁盛ぶりが窺えます。
三井越後屋がこれだけ繁盛した理由は、当時江戸で は珍しい、「現銀掛値なし」の取引にありました。当時は代金後払いの掛売りが一般的でした。これに対し現銀掛値なしの三井越後屋は、掛売りではなく、現資金で取引をし、売値を安くする取引を行いました。三井越後屋にとっては資金回転が速く、また、売れ行きに応じた仕入れを行うことができました。ちなみに、上方では、銀貨による決済が一般的で、それを江戸に持ち込んだ決済方法を現銀と呼んだようです。
他にも、訪問販売が一般的であった呉服屋において、店頭販売を実施したり、反物での販売のみでなく、端切れで販売を行うなど、革新的な商売で成功しました。

三井越後屋と三囲神社の関係

江戸時代、三井越後屋のような商家が、信仰対象とした寺社に対し、財政的な支援を行うケースがありました。三井越後屋、三井家にとって三囲神社は重要な信仰対象であったようです。「地域史・江戸東京」に編集されている斉藤照徳著「武州葛飾小梅村三囲稲荷の経営と越後屋三井家」には、三井家の信仰の証拠として、享保から明和年間までの文献をもとに、三井家の寄進をはじめとする金銭面での支援があったことを明らかにしています。
三井越後屋、三井家が三囲神社を信仰の対象とした理由は諸説あります。
まず一つは三囲(みつい)、と三井の読みに縁があったという説です。囲の字は三井の井を守っているようにも見えます。元禄6年(1693年)、宝井其角が雨乞いをしている小梅村(三囲神社があった村)の農民たちに出会い、以下の句を詠んでいます。
「遊(ゆ)ふた地や 田を見めぐりの 神ならば」
遊ふた地は夕立、見めぐりは三囲の掛言葉です。この雨乞いの句を詠んだあと、雨が降ってきたというエピソードから三囲神社は有名になります。三井との名前のつながり、また、この神威にあやかるという点が信仰の起源になったという説です。
ちなみに、宝井其角は三井越後屋についても、
「越後屋に きぬさく音や 衣更」
という句を残しています。
他の説は、三囲神社の別当寺(神社に付属して置かれた寺)である延命寺の僧侶が、三井家がもともと崇拝していた京都太秦の木嶋神社神職と親戚関係であったというもの。
他にも、三井広報委員会のウェブサイト、特集 三囲神社(http://www.mitsuipr.com/special/spot/09/)では、三囲神社のある向島が、三井の本拠である江戸本町から見て東北の方角、鬼門に位置したため、守護社となったという説があります。

現在も続く三越と三囲神社の関係

銀座の中心とも言える銀座四丁目。三越の支店である銀座三越があります。屋上に小さな社が存在します。三囲神社の分霊を祀ったものです。
2010年の売場増床にともない、屋上は銀座テラスとして生まれ変わりました。しかし、屋上の三囲神社はいまも変わらない場所にあり、江戸時代からの信仰を今に伝えています。

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